物書き ― 藤田ヒロシ

書きたい物を失った。それを自覚するまで数年かかり、それからまた数年の時を経た。失ったものは二度と手に入らないが、これまでにはなかったものは探せるし、手に入れる事もできるだろう。そんな思いで今は只「書く」ことにする。

戯曲(原作物)

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ヒトのカタチ(原作:鋏と布と型 久坂葉子)

有名デザイナー・谷川諏訪子は顧客からのクレームを受ける。それに悪態をつくと、アトリエに置かれたマネキンが話し掛けてくる。「それ本当の事?」マネキンはいちいち諏訪子をからかう。そして「人間は哀れ」だと言う。「人形こそ哀れだわ」と言う諏訪子だが次第にマネキンの不愉快な言動に心が乱されてゆく。そして「本当の事、教えてあげる」「鏡は嘘をつかない」とマネキンが諏訪子を鏡の前に立たせる。そこに映し出された諏訪子の"本当の事"とは?

原作は1953年発表の二人芝居ですが、それを三人芝居とし時代も現代として構成しました。もしサブタイトルを付けるとしたら"だから美しい"かなと思います。

私小説-かけない言葉(原作:眉山 太宰治)

小説家の「僕」は書き終えた原稿を手に行きつけの飲み屋へやってくる。「今夜は早仕舞い」という店員の里村に無理を言って酒を出してもらう。そして、その礼なのか、里村に原稿を読ませる。そこにはかつての行きつけ若松屋、そこの女中の眉山ことトシちゃんの事が書かれていた。気付く機会がなかったわけではない、言葉を掛ける機会がなかったわけではないが、何も出来ないままだった。そんな後悔を綴ったはずの小説。しかし、里村はその想いとは異なる感想を口にする。

原作の短編変小説を書いた直後という設定で戯曲化。その小説が作家にとって、読者にとって「何物になるのか」を考えながら執筆しました。

藤田ヒロシ

物書き ― 藤田ヒロシ

'74生 静岡県出身 '97に迷子の遊園地を旗揚げと同時に劇作を開始。以降25年間、同劇団の全上演作品を手掛ける。初期はコミカルな要素もあったが次第にシリアス、シニカルな要素が強くなると共に"わかりやすさ"とは一線を画してゆく。それは「そこに生きている人間の様を見せたい」という演出家としての一面が強く影響していたと思われる。劇団活動を終了したいま、登場人物数や上演環境に縛られないで、書きたい物を書きたい様に書き始める。

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