藤田ヒロシ

書きたい物を失った。それを自覚するまで数年かかり、それからまた数年の時を経た。失ったものは二度と手に入らないが、これまでにはなかったものは探せるし、手に入れる事もできるだろう。そんな思いで今は只「書く」ことにする。

戯曲(原作物)

PDFにて公開中

服を脱いだマネキン(原作:鋏と布と型 久坂葉子)

デザイナー・谷川諏訪子は顧客からのクレームを受け、悪態をつき、姿が見えない。アトリエには三体のマネキンだけ。マネキンたちは諏訪子の態度を、人間のしでかす事を、面白おかしく話す中、自分たちの身に影響を及ぼすと考え、対処しようとするが、マネキン人形の自分たちのままでは"上手く"行かない事を身を持って知ることになる。

2023年11月に上演するつもりで書いた作品。出演予定者に変更が出たのでこちらはお蔵入りに。

小説家の椅子(原作:人間椅子 江戸川乱歩)

小説家である"その女"はあるファンレターに身震いし、その送り主である"ある学生"を招いた。そこで「小説家にはそれぞれ書く時に必要不可欠な物がある」と言い、"私の"について語り始める。その始まりは"その男"から届いた身震いする手紙から始まっていた。

こちらもお蔵入りの作品。機会があれば再挑戦したいとは思います。

私小説-かけない言葉(原作:眉山 太宰治)

小説家の「僕」は書き終えた原稿を手に行きつけの飲み屋へやってくる。「今夜は早仕舞い」という店員の里村に無理を言って酒を出してもらう。そして、その礼なのか、里村に原稿を読ませる。そこにはかつての行きつけ若松屋、そこの女中の眉山ことトシちゃんの事が書かれていた。気付く機会がなかったわけではない、言葉を掛ける機会がなかったわけではないが、何も出来ないままだった。そんな後悔を綴ったはずの小説。しかし、里村はその想いとは異なる感想を口にする。

原作の短編変小説を書いた直後という設定で戯曲化。その小説が作家にとって、読者にとって「何物になるのか」を考えながら執筆しました。

藤田ヒロシ

物書き ― 藤田ヒロシ

'74生 静岡県出身 '97に迷子の遊園地を旗揚げと同時に劇作を開始。以降25年間、同劇団の全上演作品を手掛ける。初期はコミカルな要素もあったが次第にシリアス、シニカルな要素が強くなると共に"わかりやすさ"とは一線を画してゆく。それは「そこに生きている人間の様を見せたい」という演出家としての一面が強く影響していたと思われる。劇団活動を終了したいま、登場人物数や上演環境に縛られないで、書きたい物を書きたい様に書き始める。

お問い合せ

Copyright(C)2015 迷子の遊園地 All Rights Reserved